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富山地方裁判所 平成7年(わ)48号 判決 1995年9月01日

裁判所書記官

角屋明里

本店所在地

富山県高岡市出来田一四番地

株式会社和田鉄工建設

(右代表者代表取締役 和田徹)

本籍

富山県高岡市本町六三番地

住居

同県同市本町一〇番八号

無職

和田なを江

大正一四年一一月一六日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官杉垣公基、弁護人新井弘二各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社株式会社和田鉄工建設を罰金六〇〇〇万円に、被告人和田なを江を懲役二年に処する。

被告人和田なを江に対し、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社株式会社和田鉄工建設(以下「被告会社」という。)は、富山県高岡市出来田一四番地に本店を置き、建設業を目的とする資本金三〇〇〇万円の株式会社であり、被告人和田なを江(以下「被告人」という。)は、被告会社の常務取締役として同社の経理及び決算業務を統括管理していたものであるが(平成七年五月一二日辞任)、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の外注費の計上、未成工事支出金の圧縮及び完成工事原価の水増しなどの不正な方法により所得を秘匿した上、

第一  平成元年五月一日から平成二年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億二五八七万三八五六円(別紙1修正損益計算書及び同4修正当期製品製造原価報告書参照)であったのにかかわらず、平成二年七月二日、同県高岡市博労本町五番三〇号所在の所轄高岡税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八八六一万五九三八円でこれに対する法人税額が三〇三九万五三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額八五二九万一九〇〇円と右申告税額との差額五四八九万六六〇〇円(別紙7ほ脱税額計算書参照)を免れ、

第二  平成二年五月一日から平成三年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五億九九四六万六〇九一円(別紙2修正損益計算書及び同5修正当期製品製造原価報告書参照)であったのにかかわらず、平成三年七月一日、前記高岡税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億七六七七万二六六八円でこれに対する法人税額が五八六〇万七三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二億一七一一万七六〇〇円と右申告税額との差額一億五八五一万〇三〇〇円(別紙8ほ脱税額計算書参照)を免れ、

第三  平成三年五月一日から平成四年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億八一八〇万八七一二円(別紙3修正損益計算書及び同6修正当期製品製造原価報告書参照)であったのにかかわらず、平成四年六月三〇日、同市本丸町七番一号所在の所轄高岡税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二億一五四九万二六八〇円でこれに対する法人税額が七一七六万七六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億三四一三万六一〇〇円と右申告税額との差額六二三六万八五〇〇円(別紙9ほ脱税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠)

判示全部の事実について

・被告人の公判供述

・被告人の検察官調書二通

・半田安子(四通)、小林秀次、田中久栄、鎧啓子の各検察官調書

・捜査状況報告書

・脱税額計算書三通

・証明書(四通、検察官請求証拠番号甲五ないし七、一四〇)

・査察官調査書三五通

・商業登記簿謄本(弁護人請求証拠番号二二)

(法令の適用)

(刑法は、平成七年法律第九一号附則二条一項本文により、同法による改正前のもの。)

被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項(判示第一の事実の罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役二年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予し、さらに、被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社についてはそれぞれ法人税法一六四条一項により同法一五九条一項(判示第一の事実の罰金刑の寡額については前に同じ)の罰金刑に処せられるべきところ、情状によりそれぞれ同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金六〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の事情)

本件は、建設業を目的とする被告会社が、平成元年から平成三年にかけていわゆるバブル景気により受注を飛躍的に伸ばし多額の利益を得たにもかかわらず、架空外注費の計上、未成工事支出金を完成工事原価に付け替える等の方法により、法人税を脱税したという事案であるところ、脱税額は三年度分合計で約二億七六〇〇万円と巨額であり、ほ脱率も最高七〇・五パーセントと高く、かつ、脱税の動機は、将来景気が悪化した時に備えて会社に留保するためというものであって、酌むべき点はない。脱税の態様も、取引先に請求書の書換えや白紙の請求書の交付を依頼するなど、第三者を巻き込んだ巧妙なものである。そこで、本件犯行は、そのほ脱額、脱税動機、脱税態様等からして悪質であり、そうした脱税工作を率先指示して行わせた被告人の刑事責任は重いというべきである。

しかしながら、各年度分について修正申告又は更正がなされ、本税、延滞税及び重加算税がすべて納付済みであること、被告会社は、今回の事件により、富山県及び高岡市から二か月の入札指名停止処分を受け、主要な取引先からも取引を停止されるなどして業績の著しい低下をきたし、平成七年四月期には赤字決算となっていること、被告人は、被告会社の取締役を辞任する等反省の態度が窺われること、これまでに業務上過失傷害による罰金前科以外に前科前歴のないこと、高齢であることなど被告会社及び被告人にとって酌むべき事情もあるので、これらの事情を考慮して主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 堀内照美)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

<省略>

別紙2

修正損益計算書

<省略>

<省略>

別紙3

修正損益計算書

<省略>

<省略>

別紙4

修正当期製品製造原価報告書

<省略>

別紙5

修正当期製品製造原価報告書

<省略>

別紙6

修正当期製品製造原価報告書

<省略>

別紙7

ほ脱税額計算書

<省略>

別紙8

ほ脱税額計算書

<省略>

別紙9

ほ脱税額計算書

<省略>

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